日々是チャレンジ復刻版


(注意:文中リンクは殆ど切れてます。一応オリジナルのリンク先を残してますが、余り役にはたたないでしょう)


第1回:「シリコンバレーお買い物事情」 1998/07/24
 昨年の4月から約1年ほど,アメリカは西海岸のいわゆるシリコンバレーで仕事をしてきました。まぁ,現地の会社でソフトウェア屋さんをやってきたのですが,そこで色々と体験した出来事や面白い話などをつらつら書いて行こうかと思います。

●アメリカが通販天国になったワケ

 アメリカといえばやはり通販の国。というか,必然があって通販の国になったと思わざるを得ない所があります。例えば,日本でも有名なFRY's electric。実はこのFRY'sは,シリコンバレー一帯に十数店舗があり,いずれの店舗も半端でなくデカい。

 デカいからには当然モノも豊富にあるのですが,なんか偏りがある。例えばATのケースはよりどりみどりかと思えば,ATXのケースは選択の余地があまりなかったり,マザーボードを探すとIwillだのTyanだのはあれこれあるくせに,Asustekなんて皆無だったり。

 初めてFRY'sに行ったときはその安さに圧倒されましたが,換算レート1ドル=130円で計算してみると,実はあまり安くないなんていうものも少なくなかったですし,他の店ではもっと安く売ってるモノも少なくない。要するにFRY'sのメリットとは「大規模な品揃えのおかげで,ほかの店を回らなくても済む」という一点に尽きたりします。

 ところがこういう店は,筆者のような秋葉原巡礼タイプ (気に入った店が10〜20店舗あり,秋葉原に行くとこの気に入った店をとりあえず全部回り,最安値を付けている店で目的の商品を購入する) の人間にとっては欲求不満が残ります。従ってつい他の店も……となるのですが,アメリカで巡礼をやるのは結構大変な作業です。

 というのも何しろ土地 (&道路) が広いので,店と店の間隔はえらく離れており,車で移動するしかないからです。筆者の場合,SunnyValeのFRY'sによく出かけた (ここは101号というFreeWayから非常に近いため,行くのが楽だから) のですが,このSunnyValeのFRY'sはのド真中を縦に走るLawrence Express WayとKern Avenueの角にありました (現在はここが手狭になったため,Kern Avenueの突き当たりのT字路のあたりに移りましたが) 。

 で,次に正面にあるT-Zone SunnyVale店に行くのですが,これはまぁさすがに歩いて行ける。その次に行きたいのが,Laurence Exwyを挟んで反対側にあるAcion Computerなのですが,これが大変。Arques Avenueまで歩かないと横断歩道がないし,横断歩道を使わずに歩道を横切るのは (秋葉原の中央通りとかだと,筆者はしばしばやってるんですが) ,アメリカでは完全に自殺行為。

 このExpress Wayというのはハイウェイとはちょっと違い,信号や横断歩道があるのですが,ところがその間隔が異様に長く,しかも制限速度は時速55マイル。実際は時速60マイル≒100キロほどで車が走ってます。ちなみにこの辺は確か片側5車線。という訳で,徒歩だと横断歩道まで約10分,横断歩道からAction Computerまでも約10分で合計20分かかります。結局,車で移動したほうが早いわけです。その後,これはまた徒歩で行けるComputer Literacyをのぞいた後に,「CompuUSAでも行くかぁ」となるのですが,最寄りのCompuUSAってのがここから南にまで約2マイルほど。「車社会アメリカ」を再認識できるヒトコマです。

 他に,小さいお店 (日本でも数年前,海外通販というと必ず名前が出てきたHi-Tech USAなんかがこれにあたります) はあちこちに点在しており,101号とほぼ平行に走る84号線 (El Camino Realという何故かスペイン風の名前が付いた一般道) に車を走らせるとこうした店を回るのも容易なのですが,店と店が下手すると数マイルは離れていたりするので,最初は物珍しさにがんばって「巡礼」をやっていたものの,1カ月もすると「もう面倒くさい」に気分は変わってきます。で,「こりゃ通販の方が楽だわ」になってくる訳です。

●お買い物の救いの手はやっぱり「通販」,なのだけど……

 そんなわけで,通販に頼ると今度はかなり自由度が上がります。例えばMOやPDのメディアは,日本だとそこら辺で売ってるのですが,アメリカだと店頭に常備してるのはT-Zoneくらいのもの (JAZとかZIPはそこら中で売ってますが) 。あるいは主要な台湾メーカーのマザーボードも,まず店頭ではお目にかかれない。

 ところが通販だとそうした製品がかなり入手可能 (に一見みえます) 。MicroTimesとかComputer Currentsといった無料の広告雑誌や,Computer Shopperなどの廉価 (アメリカではすごく安いです) な雑誌を探せば店などはいっぱいあるし,気の利いた店ではインターネットで通販の申し込みが可能。おまけに,複数のショップで価格や商品のサーチをやってくれるComputer ESPなんてページもありますんで,目的のものを探すのは非常に容易だったりします。

 が,通販の場合,トラブルが気になるところ。実際,結構色々なトラブルがありました。……ということで,以下次号。

その後の状況:T-Zoneはその後間もなく撤退。空いた建物にはマットレスの安売り屋が入ってます。


第2回:「海外通販の道は厳しく険しい……なんちゃって」 1998/08/21

●通販業者はまさにピンからキリまで

 通販業者と一口に言ってもさまざまなタイプがあります。

 まずあるのが,通販オンリーで,まじめに力を入れている店。ちょっとコンピュータ業界からは外れますが,通販オンリーの衣料メーカーとして有名なLands' Endを筆者もよく使うのですが,電話・Fax・インターネット (オーダー専用のプログラムが無料でダウンロード可) ・Webとオーダー方法もさまざまで,カタログを申し込むと,まぁ2週間で間違いなく入手できます。しかも,オーダーすると翌日には確認のメールか,下手すると電話で確認がきたりします (一度,朝7時に確認の電話が入った時があり,寝入りばなのボケた頭にネイティブイングリッシュが弾丸のように響き渡り,一瞬パニックを起こしかけました) 。こういう店はかなり安心。ここからずいぶん色々な物を買いましたが,これまでのところトラブル皆無でした。

 コンピュータ業界でも, (今は閉店してしまって悲しいのですが) ComputerExpressというソフトウェアをメインに扱っていたショップがあり,USで発売直後のゲームを頼むときちんと1週間で日本まで届き,10回以上利用しても1回もトラブルなしという安心さがありました。

 次にあるのが,通販オンリーだけどややいい加減な店。ちょうどアメリカでAMDのK6-233MHzが発売になった直後の事。筆者も1つ入手したくなり,Computer ESPで一覧を調べました。このページで一番最安値を付けていたのがGR Companyというショップ。ショップのページに行くと,在庫がある (In Stock) と表示されています。「よし,買った!」とオーダーすると,翌日

 We are very sorry to inform you that we cannot process your
 order at this time. We currently cannot get AMD 233MMX's.
 Sorry for the inconvienance.

 Tim Hunter, GR Company

まぁありそうな話なので

 Dear Mr. Hunter.
 When I can order AMD 233MMX? or do you have Cyrix M2-233MHz
 in stock now?

と聞き返すと,

 We don't have the cyrix either. I really don't know
 when the K6 233's will be available.

という返事が。「んじゃ広告だすなよ」,とボヤきながら次のショップを探すことにしました。ちなみにGR CompanyのWebページでは値段も出ていて,在庫ありになっているあたりが凶悪なのですが,まぁきちんと対応してくれただけマシでした。

●Webでの注文は当てにならない?

 次に見つけたのはNeutron Inc,というショップ。ここもIn Stockだと表示されているのでWebからオーダーを掛けると,その当日に

 This letter is to confirm receipt of your Neutron Inc.
 online order. Your order was processed as invoice number
 878755008.208.25.109.254.N.
 (後略)

という確認メールがきました。これが11月6日のこと。即日Personal Checkを送り,あとは今か今かと待ち構えていてもさっぱり届かない。何度かNeutronにメールを送ったり (やはり電話は苦手) したのですがなしのつぶて。「こりゃぁミスったかな?」とか思っていると,11月25日になって,

 Please be notified that your order (# 878755008.208.25.109.254.N)
 from Neutron Inc. is being shipped to the following address :

なんてメールがようやく届く。要するに在庫切れをしらばっくれてオーダーを受け,入荷して慌てて送ってきたということです。ちなみにオーダーして2週間もたつと,一般の店でもK6が入手できるようになっており,FRY'sで380ドル位で売っているという状況。通販にしただけ馬鹿を見たわけですが,まぁ勉強代としてはそれほど高価ではないので我慢ができます。

 私見ですが,PCの通販ショップの場合,この程度の対応が一般的だと思ったほうが良さそうです。今回は正しくモノを送ってきただけマシでした。というのは,もっとひどい状況もあったからです。というワケで次回に続く。


第3回:「幻のスパルタカス」 1998/09/03

 さてお待ちかね (?) ,トラブルのお話です。

●注文はスムーズに済んだものの……

 きっかけはAppleが「スパルカタス」というコードネームで知られる,20周年記念モデルのMacintoshの大安売りを始めたところにあります。Appleの通販Webページでも2,000ドルをやや超える程度,そしてMacintoshを扱う多くの通販業者のページでは,下手すると2,000ドルを切る程度の金額でこのスパルカタスが販売されました。

 当然ながら全世界から一斉に注文が集まったのですが,Appleによれば「この製品の海外販売は許さん」 (要するに届け先がアメリカ国内でないといけない) という制限がつき,直接日本からのオーダーは非常に困難に。こうなるとアメリカに住んでいる私のところに「購入代行してくれ〜」というリクエストが届きます。

 まぁしょうがないので,いくつかの通販業者の中で,比較的安値で提示していたClub Macというショップから買うことで,話が (私に代行を頼んだ人間との間で) 決まります。オーダーはWeb上からできるため,さくっとその日のうちにオーダー。

 その翌日,「注文を受け付けました。おそらく1〜2週間以内に出荷できるかと思います」といった内容の確認メールが届きます。ところがその翌日には,「口座に十分な金額がありません」なんて意味のメールが届く。「おや?」と思いつつ「そんなことはない」と返事を返すと,

  "I apologize about this sir, but your credit card has been
  declined again. Please contact you bank and see what might be
  happening with your credit card.

  The total for your purchase is: $ 2,075.71
  Do you have a limit as to how much you can spend a day?
  Please respond."

なんてメールが。

●短期滞在の落とし穴

 ここでちょっと説明しておくと,私はWells Fargoという銀行に口座を持っており,ここの「キャッシュカード兼VISAカード」という面白いカードで支払いをしていました。このカードが面白いのは「扱いはVISAでも,実際はカードで支払いをした瞬間に自動的に口座から金が引き落とされてカード会社への支払いが行われるため,実体はキャッシュカードと同じ」という点です。アメリカがカード社会であることは有名ですが,このカードとはクレジットカードが一般的で,キャッシュカード (ATMカード)では支払いできない場所もあります (逆にATMカードしか使えない,なんて変なところもあるので,一概には言えませんが) 。

 で,筆者のように何年もアメリカに住んでいない人間は,なかなかクレジットカードを作ることができません。ところがこのキャッシュカード兼VISAカードだと,銀行に口座を持って金が入っていれば即座に作れるというメリットがあり重宝しておりました。

 しかし,ここに落とし穴がありまして,Wells Fargoの場合はATMで1日におろせる現金の総額はたったの300ドルに制限されておりまして,今回の支払いもモロにこれに引っかかった訳です。単に「ATMではだめ」というだけで,小切手なら別に問題がないので個人小切手で支払いできないか提案してみました。

 たいてい通販業者は,個人小切手だと不渡りが出る場合があるため,銀行が支払いを保証してくれるOfficial Checkを欲しいという思惑があるわけです。この場合銀行に出かけ,手数料をいくばくか支払ったうえでOfficial Checkを作ってこなきゃいけません。

 でもこの場合,個人小切手もOKとの返事。そこで筆者の運転免許証 (短期旅行ならばともかく生活している場合,運転免許証=身分証明書なので,これがないとかなり不便です) の情報を送り,無事手続きを済ませたわけです。

 ここまでは,確かに早かった。問題はその後です。その後約3週間,いきなり音沙汰無し。その数カ月には帰国する予定があったためたまりかねて出荷の予定を尋ねるも,返事なし。翌日,

  "Tell me current status of my web order {569392}."

と強い調子でメールを送ったところ,やっと

  "I am sorry but I will no longer be getting these in. I e-mailed
  you, but appearently you did not receive it. I apologize for the
  inconvenience."

といったトンでもない返事が戻ってくる。「つまり,入手はできないってこと?」と念押しのメールを書いたところ,返事は非常にシンプルで

"Yep."

 そりゃないだろうと思いつつ,ここで完全に入手はあきらめたのですが,問題はこの時点ですでに私は日本に帰ってきていたこと。結局,キャンセルするとともに返金を求めるメールを書いたのですが,返事は

"Your order has been canceled."

の一言だけ。これが4月末の話で,その後アメリカのオフィスに頼んで何度か連絡を取ったにもかかわらず,いつどこに返金されるかまったく不明という状況が続きました。最終的には6月22日付 (キャンセル後2カ月) で2,075ドル71セントの小切手が,何とアメリカで住んでいた住所に郵送されました (!) 。

●手間ばかりかかった今回のケース

 この事情が判明したのは7月に入ってのこと。あわてて国際FAXで (もう電子メールは当てにならない) まず先に送ってもらった小切手を無効にしてもらうと同時に,あらためて日本に返金の小切手を送ってもらう手続きをとり,やっと7月末に返金を受け取ることができたという次第です。

 ちなみに日本では,CityBankで手数料1,000円を払って換金してもらえました。せめてもの救いは,入金時は1ドル131円だったのが,その後の円安のおかげで換金時には1ドル141円になっていたことで,大体2万円ほど儲かった勘定。まぁ手間を考えると2万円では割に合わない気もしますが,返ってきただけマシだと思わなければいけないのでしょう。

 海外通販には,時にはこうした落とし穴が多重に仕掛けられている (あまりの売れ行きのすごさに,Appleが出荷を中止したいうもっぱらの噂ですが,このAppleの出荷停止が今回の最初の落とし穴でした) 訳で,ある程度のリスクは考えておかないといけません。折しも巷ではiMacが噂になっていますが,同じような羽目に陥った人は……いないですよね?

その後の状況:結局スパルカタスを入手したのは、Appleが出荷を中止する直前に入手できた、ごくわずかな人だけ。残りはみんな似たような状況だったそうで....


第4回:「テスト用マシンのケースに四苦八苦」 1998/09/11

●マシンに埋もれる6畳間

 筆者は自宅で仕事をすることが多い。というのも,コンピュータ関係のライターを稼業にしていると,どれだけの資料を手元に抱え込んでおくかで決まるような部分があるからだ。したがって,NetNewsやWebからの情報,色々な雑誌のバックナンバー,その他メーカーからの資料や製品をすぐさま取り出せるようになっていないと,「あれはどうだったっけ?」で原稿が止まってしまうことが多い。だから,すべての情報を自宅の仕事場に蓄積しておいて,ここで原稿を書くといったスタイルにしないと,効率が非常に悪い。

 この結果,6畳の空間にマシンが6〜7台も転がる羽目になる。ちなみに現在は

・NT Server: Macとのデータ交換兼ファイルサーバ
・NT Workstation: 原稿書きマシン兼ネットワークアクセスマシン
・Windows 95: ゲームマシン兼原稿書きスペアマシン
・Windows 98/NT 5.0β: テスト専用マシン。頻繁に構成が入れ替わる

といった4台のデスクトップを常時利用し,この他にLet's noteがあって,合計5台となる。他に奥さん用マシンが2台 (Windows 95マシンとPower Mac) があるが,まぁこれは計算に入れなくてもいいだろう。時折テストのためにメーカー製マシンが来襲し,ピーク時には机の周りに6台ものマシンが転がっていたりするが,こういうのはせいぜい1〜2週間だけの話。通常はこの5台で作業している。

●ケースなんか無くとも大丈夫……?

 当然,これらのマシンは全部自作マシンで,ケースは極力使いまわしを心がけているが,スペアケースまで持っているわけではない (そんなものを置く場所がない) 。だから,なるべく真っ当なケースを買っておかないと泣きが入る。実際,200W電源込みで5,000円以下のミニタワーケースをこれまで5〜6個は購入している気がするが,どれも

・ケース加工が雑で,簡単に歪みやすい
・組み替えの際にケースを空けにくい
・キャパシティが不足しているので,拡張がやりにくい
・冷却が非常に苦しい

といった欠点があるため,全部他人に上げてしまったりしており,現在残っているのは奥さん用マシンのミニタワーだけだ (このケースは確かFry'sで18.99ドルという爆裂値段で売られていた記憶がある) 。一度組んだら滅多に構成を変更しない人ならば,こうしたケースでも問題ないかもしれないが,組み替えが仕事になりかかっている筆者にはやや辛いところ。そんな訳で,テスト専用マシンのケースを購入すべく,先日秋葉原に向かった。

 テスト専用マシンでは当然ながら,煩雑な組み替えが発生する。だから極端な話,ケースなんかなくても,そこそこ使うことはできる。実際,帰国後の数カ月はそんな状況で使っていた。テーブルに厚さ数cm分の雑誌 (少年マガジンなどなら多分1冊でOKだろう) を敷き,その上にマザーボードを置いて,あとは直接コネクタ類や拡張カード,CPUを装着するだけでいいからだ。K6やSlot1系のCPUの場合は,CPU冷却用に扇風機の1つもないとやや動作が不安定になるが,それを除けば使う分には問題ない。

 ところがこの発想にも問題がある。使っている最中はいいのだが,使っていない時のこのマシンが非常に危険なのだ。例えばベンチマークテストを動かしていて,ちょっと席を外そうとしたときにケーブル類を引っかけてあやうくマシンを壊しそうになったり,うっかりFDDに手をぶつけたら,FDDがまずテーブルから落ちそうになり,これに引きずられたマザーボードと電源が落下しそうになる,などというろくでもないトラブルが頻発した。さすがに「このままではいつか大事故になる」という予感があったため,ようやく新しいケースを購入する気になった。

 と,前置きが長くなったが,そんな訳で7月末にケースを購入すべく秋葉原に向かった。狙い目は台湾のShin-G Tech製のGT-233ATXである。日本でも多く使われているこのGTシリーズのケースは

・ケース両側のサイドパネルが片開きになっており,アクセスしやすい・サイドパネルを外しても,ケースがそれほど歪まない。また歪んだ場合でも,サイドパネルを閉めさえすれば,元に戻る・冷却効率が良い

などの特徴がある。サイズが比較的大き目なので場所は取るが,それが組み立て時や稼動時のゆとりにつながるわけで,筆者は愛用している。

 日本では現在,シーティーエスが総代理店となっている。ケースの品揃えがよいショップならばそこそこ在庫があることが多いし,筆者の周囲にも,このGTシリーズの愛好者がかなりいる。筆者自身,このGTシリーズのケースを3台 (GT-300,GT-212,GT-312) 使っているほどだ。

 GT-233はこのGTシリーズの最新版にあたる。構造的にはGT-300に戻っているが,フロントがパンチングメタルを使ったグリルに変更されており,見かけがカッコ良い (どうせフロントパネルも外して使うので,関係ないといわれればそうなのだが……) 。

 ところが,意外にこのGT-233ATXを在庫で持っているショップが少ないのだ。フルタワーのGT-333ATXはあったのだが,さすがにフルタワーでは置き場所に困る。この際,GT-212やGT-200といった前モデルでもかまわないと思ったのだが,ちょうど,どこのショップも在庫切れ。ほとんどのショップで「お取り寄せはできます」とは言われたのだが,買って帰ろうという意気込みで出てきただけに,持って帰れないのは何か悔しい (笑) 。

 置いてありそうな店を数件回っていい加減くたびれた所で,最後に寄ったのがUser's Side。ここにもやはりGT-213はなく,どーしよーかなー,などと途方に暮れていると「同じメーカーのこれなんかどうです?」と薦められたのが,Shin-G TechのSG-1240XCだった。ミドルタワーの範疇に収まるサイズでありながら,サーバ用ラインアップとなっている製品だ。

 このケースがまた,微妙な構造なのだ。デュアルPentium IIマザーボードを使えるように,マザーボードの上にドライブベイや電源がこない設計になっており,またサーバにふさわしく,電源以外に吸気2つ,排気2つのファンを取り付けられる。もちろんサイドパネルは片開きで取り外し可能。電源も300Wだから安心だ。5インチベイ3本と3.5インチのFDDベイが1つずつあり,この他に3.5インチのドライブベイが付く。ファイルサーバにはやや3.5インチベイが不足気味ではあるが,それは大容量ドライブを搭載すれば補えるであろう。ドライブベイ自体に冷却ファンを追加する場合も考慮されており,小規模なサーバを作るにはもってこいのケースである。

●普通に使う分にはいいのだけれど

 が,別に筆者はファイルサーバを作りたい訳ではないところが問題だ。

 このケースではデュアルPentium IIマザーを搭載する空間を確保するため,あまり見たことのない位置に3.5インチドライブベイを搭載する。上述のWebページを見ていただくと,このドライブベイがどこに付いているか分かりやすいが,要するにマザーボードの真上にあたる場所だ。ちょうどケースのサイドビーム (日本語で書けば横梁,となるのだろうか) になる位置と構造を取っている。

 つまり,マザーボードをいじったり,カードの挿し替えを行う場合に,ちょうど邪魔になってしまうのだ。位置的にはAGPスロットよりもう少し上になるので,カードの挿し替え自体は不可能ではない。しかしドライブベイが邪魔になってスロット周辺が目視しにくくなっているので,どうしてもドライブベイを外さないと作業がやりにくい。

 ところが,このドライブベイを取り外すのが一苦労である。理由は簡単で,IDEドライブのケーブル長がぎりぎりなのだ。最近はUltraDMA/33対策もあり,無意味に長いIDEケーブルはまずない。手持ちのケーブルを片端から漁り,ついでにドライブの配置を散々やり直して,何とかIDEケーブルを外さなくてもドライブベイを取り外しできるようにはなったが,依然として邪魔なことに変わりはない。いっそハードディスクを全部5インチベイに移せばいいのかもしれないが,すでにベイはデバイス満載の状態なのでこれもかなわない。要するに,テスト用マシンには向いていないという事実だけが露呈する結果となってしまった。

 仕方ないので,近いうちにもう1台ミドルタワー用ATXケースを買おうかと考えている今日このごろなのである。


その後の状況:未だにShin-G TechのSG-1240XCは使ってます。あとGT-333ATXも。GT-300/GT-212/GT-312は全部放出してしまいました。ま、流石にATケースはなー。


第5回 スペシャル編:「パソコン・スピード組立世界大会観戦記」 1998/11/07

 その日,亜土電子工業の本社2階は妙な熱気に包まれていた。既に地区予選・予選・国内の決勝と3つの大会を勝ち抜いてきた15名が,優勝賞金80万目指して (?) 熱い戦いを繰り広げていた会場は,何かよくわからない緊張感に包まれていた。

 前日だったか前々日だったかに急遽会場が変更されたことを知らず,当日ノコノコとT-Zoneミナミ館のDIY FACTORYに出かけて初めて会場変更を知ったため,残念ながら韓国選手による準決勝 (世界大会の予選が正式名称なようだが,要するに準決勝である) は見逃してしまい,台湾選手の準決勝途中からの観戦となった。比較的大き目の会議室ではあるが,観戦エリアには出番待ち (と出番が終わって観戦中) の他国選手,応援の人,関係社,純粋に無関係な観客,および結構な量の報道関係者でごったがえしている。中には妙齢の御婦人までおられて,一瞬なぜだろう? と頭をひねってしまった (後で理由が分かったが) 。結構ごった返している上に実況中継まで行われているため,会場はなかなかうるさい。選手の集中力に影響しないのだろうか? と思いきや,ひょっとするとと全く耳に入っていないのかもしれないと思える程,選手は集中している。

 準決勝・決勝ともに,最初に規定数のマシンを組み立て終わった時点で全選手ともトライアル終了となる。もっとも最終的な順位は時間ではなく,組み立ての正確さを100点満点で採点 (例えばマシンが立ち上がると20点,HDDのネジをしめてあれば1点,といった具合) するから,多少なりとも戦術を凝らすことはできる。つまり点数が少なくて手間が掛かりそうな作業は端折ってしまうことで,完成までの時間を減らすという方法だ。

 頭で考える分にはうまく行きそうに思えるが,実際にはなかなかうまく行かないようだ。当然時間配分は他の選手の進行状況をながめながら勘案することになるので,このネジを締めて1点稼ぐか,締めずに何秒 (何分ではない!)か 稼ぐか,をつねに判断する必要がある。ところがこの採点項目が全部で36項目もあるので,筆者のような鳥頭にはとても覚えきれない。いっそ力技っぽく,とにかく全力で組み立てる方があれこれ迷わない分賢いということだろうか?

 そうこうしているうちに台湾選手の決勝戦が終了。審判が一斉に全員のマシンに取りついて採点を開始する。しかしながらなにせチェック項目が36カ所だし,場合によってはドライブベイを外さないと確認できない (HDDのネジが4つとも留まっているか,なんてすぐにはわからない) 項目もあるわけで,結局5人の選手×2台で10台のマシンを採点するのに20分近く要する結果となった。

 この韓国・台湾の選手は圧倒的に高校生が多く,なかには16歳なんていう選手までいた。日本では参加の際に年齢制限があるので,例えば筆者など参加したくても出来ないという問題があった (シニアの部とか,来年は作っていただきたいものである) が,それにしても年齢が若いのはちょっと面白いところ。最終戦に残った日本選手がいずれも20代を超えた社会人 (フリーター,という職業もあったが……) であることを考えると,ちょっとばかり文化比較論したくなる (実際はサンプルが少なすぎるし,しかも偏りが多すぎるので無理だろうが) 。

 ついで最後の日本選手の争いとなる。7月にぱそまる`98で開かれた日本大会の時は,優勝タイムが11分58秒と12分の大台を切る成績だった。が,実はこのタイムなら「俺の方が早いんじゃないか?」などと考えてしまう筆者。仕事柄マシンの分解組立などウン百回(さすがに千台まではいってないと思うのだが……) やってきたので,10分台程度までいける気がしていた。

 ところがトライアル直前インタビューで日本大会の優勝者である阿部選手の「1台9分で仕上げます」宣言が出て,その場に居合わせた全員が一瞬絶句。実際,トライアルが始まって見ると1人だけ明らかに手つきが違う。言葉で説明するのは難しいが,とにかく無駄な動きが少ない上,凄く基本に忠実に作業している。

 例えばネジをドライバで締める際に,左手でドライバの先端を支え,右手でドライバのグリップの一番太い部分を,輪っかを作るように握り締めて力を込めて廻して行く。確かにこのやり方が一番速く,しかも確実にトルクを掛けて締め込めるから,万が一ネジのピッチが違っていたとしても強引にねじ込めるだろう (笑) と思える手つきだ。1台目を9分弱で折り返し,2台目も同じ手つきで確実に作り上げて行く。この時点で2位以下の選手に約1分のリードを取っており,誰の目にも勝利は明らかだった。実際,この作業風景を目の当たりにすると,先に抱いていた10分台の密かな自信がへにゃへにゃと崩れて行く思いだ。

 とはいえどの選手もベストを尽くしたことがありありとわかる。結局2台目はややペースが落ち,合計で18分少々で準決勝トライアル終了。韓国・台湾の選手の間にはちょっとした動揺が走ったようだ。日本選手はといえば,いずれも椅子か床に座りこんで肩で息をしている状態。いかに集中していたかがわかろうというものだ。

 この準決勝の後、各選手にインタビューしてみると、いずれの選手も毒気を抜かれたかの感がある。「あの人は違うよー」とは京都から参加した櫻井選手の言。準決勝開始前に「阿部選手には負けられない」と快気炎を上げていた札幌の斎藤選手からも、「ケースの蓋を締めるのをパスして時間短縮を目指したのだけど、駄目だった」と落胆したコメントを語った。やはり下手な戦術を立てる暇があれば正面突破を目指したほうが早い、ということなのだろう。

 またもや20分の採点時間の後に,30分ほどのインターバルを置いていよいよ決勝戦。流石だと思うのは,先の安部選手の18分のタイムにかえって闘志を沸き立てられている様子がありありと伺えること。「決勝は25分」の優勝宣言 (?) にもあまり動じていない。今度は組み立てるべきマシンが3台に増えており,集中力が続くのかやや心配になって来るほどだ。

 トライアルが開始された。一斉にマシンに飛び付く6人 (各国2人づつ) の選手。何でもエントリーした選手の数は全世界合計で800人にも及ぶとのことで,その頂点にたつ6人である。さすがに今度はそうそう差が付かない。

 1台目完成のトップはやはり阿部選手だったが,2位,3位の選手もそれぞれ20秒,40秒遅れ程度で2台目に取り掛かる。この程度の差だとワンミスでひっくり返る時間差だ。阿部選手が1台9分を切る程度,2位が9分フラットといったところだろう。ところがこの差は2台目組立時点で大きくなる。阿部選手強し,と思いきや,ここから各選手の追い上げが始まった。

 実際,この3台目が一番速かった選手は7分台に入れていたのではないかと思うほどだ (各選手のラップタイムを取っておけばよかった,と今になって後悔している) 1分近くあった2位の選手との差は最終的に10秒程度 (ケースのネジを1個締める分) まで縮まったし,3位/4位の選手もおそらく30秒近辺まで追い上げたように見えた。さすがに各国の代表選手だけのことはあった,と再確認するシーンだった。

 最終的な結果は既にZDNet Wireでも報じられているので割愛するが,こういう競技もなかなか面白いと思わせるだけの迫力がある選手権だった。意外に基礎知識 (ドライバの使い方,ATの組立方法全般,etc……) がしっかり身に付いていないと,短時間での組立は難しいし,経験を積めばいいというものでもない (1位と3位の選手は,どちらもAT組立歴3年ほどとのこと)あたりは,ATの組立技術の普及には持ってこいのイベントだろう。

 来年以降も継続してゆきたいという主催者からのコメントも心強い。ぜひ来年はシニア部門とかプレス部門を作っていただきたいものである。

その後の状況:T-Zoneはご存知の通りの苦境に陥り、PC関連からコスプレメイド関連(笑)に業態変更を遂げつつあるのはご存知の通り。ま、二度と開催されることはないでしょうな。


第6回:「1ユーザーの目で見る,CATVインターネット接続 (前編) 」 1998/12/12

 本誌でも公家幸洋氏が連載を行い,興味を持つ読者も多いであろうCATVインターネット,実は筆者も使っている。幸い住まいが東急線沿線にあるため,数あるCATVインターネットの中でも最も格安と思われる,東急ケーブルテレビジョンのインターネット接続を使っている。

 ということでしばらく,1ユーザーとしてCATVインターネットの率直な使用感を述べてみたいと思う。まず,これをプロバイダとして見たときのメリット,良い点を挙げてみよう。

●速い!

 すでに何度も語られていることだが,やはり速い。14.3Mbpsという理論的な最大データ転送速度を目一杯までカバーしている。実際にはパソコンとは10BASE-Tで接続
するわけだから,速度の上限は10Mbpsまでとなるが,ほかのいくつかのCATVインターネットプロバイダのように,128/256Kbpsといった制限を設けることはしていない。

 実際には,この速度は上流サイトへの接続速度や,同時に利用する他のユーザー数によって左右されるが,これがそう悪くはない。例えば筆者は東京都目黒区に住んでいる。自宅からはまず,学芸大学サブセンターにあるプロキシに接続し,ここから光ケーブルでたまプラーザのセンターにあるファイアウォールを経由してIIJの横浜に接続している「らしい」。今年10月からは,このIIJ横浜への回線が6Mbpsになったそうで,かなり使いやすくなった。

 さすがにテレホーダイタイムの始まる午後11時前後は非常にレスポンスが悪い (これはもう特定のプロバイダの責任ではなく,日本中が等しく混んでいるのではないかと思う。諸悪の根元は絶対NTTである) が,筆者のメインの仕事時間帯である午前3時〜午後2時頃の範囲では非常にスムーズ。ウェブページからのダウンロードは平均で毎秒30Kバイト,良いときで毎秒50Kバイトもの転送速度に達する (過去に一度だけであるが,毎秒150Kバイトをマークしたこともあるほどだ) 。

 過去にMN128-SOHOでリムネットを利用していたときはISDNの64Kbps接続。せいぜい毎秒7Kバイト程度,2Bモードで128Kbps接続にしても毎秒13〜14Kバイト程度しか出なかったことを考えると,256Kbpsの接続と同程度かそれ以上の速度が出ているわけだ。

●定額で安い。金額は単純計算で6分の1

 完全定額制なので,通信費が固定だ。しかも,CATVインターネットだけだと月額5,200円だが,ケーブルテレビ自体と同時に申し込む場合には2,000円分が割引となり,わずか月額3,200円となる。

 筆者は申し込みの直前まで,プロバイダ (リムネット) とNTTに合計して毎月3万円以上支払っていたから,単純に考えても6分の1である。最初に工事費がかかるのは致し方ないところだが,筆者の場合,隣の家がすでにCATVにを申し込んでいたこともあり,工事は最小限ですみ,工事費も3万円程度だった。この程度だと2カ月使えばモトが取れることになる。 (公家氏も述べているとおり) ,ICQやネットゲームを楽しむには最適と言える。

●制約が少ない

 東急ケーブルテレビの場合,PCとの接続にあれこれ制限がない。1ケーブルモデム (というか,1契約) あたり1,023個のIPが割り振られ,この範囲内なら何台接続しようとかまわないのだ。他のCATVインターネットプロバイダを見ると,1台のPCでしか接続できないとか,NATを使ってはならないなど,制約があるところが少なくないが,筆者の場合,そんな契約では使い物にならないのだ。

●地理的なカバー範囲が広い

 東急線の線路を利用してケーブルを敷設している関係で,東京都5区のほか川崎市3区,横浜市4区をカバーしている。ある程度線路沿いの場所でないと工事費用が高くつく場合もあるので注意は必要だが,徐々にカバー範囲は広がっている。今すぐは無理でも,じきに接続できるというエリアは多いだろう。

●安全

 常時つなぎっぱなしのCATVだけに,セキュリティ対策は気になるところ。東急ケーブルテレビの場合,センター側がDHCPで動的にアドレス割り当てを行うが,この際,1時間ごとに割り当てアドレスが変わるという安全設計になっている (厳密に言うと,DHCPアドレスのリース時間が1時間に設定されているので,1時間ごとに再割り当てが行われる) 。つまり,IPアドレスから逆探知して入りこもうとするクラッカーに対する,効果的な対策となっているのだ。また,NBTで利用する137〜139番ポートのリクエストは通過しないそうなので,外部からLAN内の共有フォルダを覗かれる心配もない。

 ここまで読んで,「ああ,東急ケーブルテレビは素晴らしい」と思われた人も多いのではないかと思う。実際,筆者の満足度もそう低くはない。仕事の関係で東京に引っ越してくる友人が,場所探しにあたって東急ケーブルテレビのカバー範囲に入るようにへ家捜しをしている,なんて例があるほどだ。

 しかし,物事には必ず光と影がある。当然東急ケーブルテレビにもいくつかの問題がある。具体的な問題点について,次回以降説明していきたい。

その後の状況:東急ケーブルテレビは、イッツコム(http://www.itscom.net/)に名前を変えてますが、まだ元気です。でも、30Mbps+グローバルIPの「かっとびワイド」、目黒区はカバー範囲なのにウチまでこないのは許せん!


第7回:「1ユーザーの目で見る,CATVインターネット接続 (中編) 」 1998/12/19

 前回は東急ケーブルテレビのメリットをいくつか挙げてみた。そこで今度は一転,困った点について説明してみよう。

●謎のサポート範囲

 筆者が住んでいるのは目黒区の原町というところだ。ここは東急目蒲線の沿線である。さてこの目蒲線は,ちょうど目黒区と品川区の境を走っているため,線路を挟んで反対側の地名は品川区の小山となる。線路をまたぐだけだから,品川区小山も東急ケーブルテレビのサポート範囲かと思いきや,まったくサービス提供の予定はなさそうだ。

 また,東京都町田市に住んでいる住人で,3m程度の道路の向かい側までは東急ケーブルテレビのカバー範囲なので,「工事費は払うから加入させてくれ」と頼んだが,断られた,という話も聞いたことがある。この理由について聞いたことがあるが,明快な回答は返ってこなかった。

●不意のサービス停止

 定期的なメンテナンスの時以外に,不意にいっさい接続できなくなることがある。大体はサブセンターでの障害発生などが理由だが,一度だけ,工事の際に光ケーブルを誤って切ってしまって不通になったということもあった。頻度が多いか少ないか,定量的な判断基準がないので何ともいえないが,筆者の経験では定期メンテナンスが平均で月1回あり,この他に大体1カ月に1回程度,数時間単位で不通となる。この点,利用を考えている人は念頭においておくのがいいだろう。

●DHCPしかサポートされない

 かなり頭を抱えることになった点の1つめが,これである。

 ケーブルモデムに接続する機器はすべて,IPアドレスをセンターからDHCPで取得する必要がある。ここで誤解のないように書いておくと,これは別にケーブルモデムの制限でも何でもなく,東急ケーブルテレビの仕様だ (しかもマニュアルのどこにもこのことが書かれていないのが,さらに困ったところだ) 。

 ケーブルモデム自体は,極端に言えばケーブルのアナログ信号を10BASE-Tのデジタル信号に変換する,双方向のADコンバータでしかない。この結果,固定のIPアドレスを持つ (というより,DHCPをサポートしない) 器材の場合,外部と通信できなくなってしまうのだ。たとえばLinuxの場合,デフォルトはIPアドレスは固定となっているため,dhcpcdなどのパッケージを用いてDHCPサーバからIPを取得する必要がある。

 これで困るのは,たとえばTCP/IPオンリーのプリンタサーバや,他のIPルータなどを用いている場合だ。筆者の環境には,幸いTCP/IPオンリーのプリンタサーバはないが,NM128-SOHOと環境の併用が非常に難しくなっている。この件に関して東急ケーブルテレビに連絡を取った際の回答は「そういったIP固定の機器とは併用ができない」というあっさりしたものだった。要するに,固定IPを振るような設定は一切できないというわけだ。したがって,ユーザー側でネットワーク分割などを行わない限り,こうしたIP固定の器材が利用できないという状況になっている。

 また,これに前述の不意のサービス停止がからむと,さらに困ったことが起きる。DHCPによるIPアドレスのリースは1時間で切れるため,Windows 95/98/NTは1時間ごとに,新規アドレスのリースをDHCPサーバにリクエストしているが,不意の停止のためリクエストの返事がない場合,条件によってはTCP/IPのサービスが (OS内部的に) 止まることがあるらしい。きちんとした原因は究明できていないものの,これが,メーラーやウェブブラウザなどがいっせいに一般保護違反を引き起こして止まるという現象につながっているものと見られる。幸い筆者は,ウェブアクセスにはInternet Explolerを使わない主義だが,仮にIEでウェブにアクセスしている最中にこれが起きると,IE自体が一般保護違反を出すため,下手をするとマシンのリセットが必要となる。仕事中だったりしたら,データがパーになるところだ。

 このマシン側の異常は,東急ケーブルテレビよりも,むしろMicrosoftのDHCPクライアントのインプリメントにあるとは思う。ただ,東急ケーブルテレビの接続ガイドがLANに直接Windowsマシンなどを接続するように推奨している以上,こうした現象の把握や回避法の提示などを記載しておくべきではないか,と思う。

●外部からメールが読み出せない

 困った点の2つめがこれである。

 先日,筆者はCOMDEX/LasVegas取材のためアメリカに出かけたが,この時に東急ケーブルテレビから一切メールをダウンロードすることができず,大変に困った。なにしろここは「セキュリティ確保のため」,外部からはメールサーバへ一切アクセスできないのだ。もっとも,外部からのアクセスを拒絶するしかセキュリティ確保の方法はないのか,と言われるとはなはだ怪しい (APOPをはじめ,他にもいろいろ手段はあるだろう) 。

 ちなみに同社では,ダイヤルメールなるオプションを提供している。これは,月額320円の追加料金で,東京もしくは横浜のアクセスポイントを経由して,メールサーバへアクセスできるというものだ。

 が,筆者のように,すでに米国のISPのアカウントを持っている人間が,何が悲しくて東京まで国際電話をかける必要があるのだろうか? ちなみに,このアクセスポイントがサポートするスピードはどの位か,あるいはPIFASに対応しているのか,などの疑問について,同社のホームページは何も語っていない。筆者は結果としてこのオプションは申し込んでいないので,詳細はいまだ不明だ。

 ちなみに件のアメリカ取材の際は,東急ケーブルテレビのメールサーバからいったんメールを読み出し,これをアメリカのプロバイダに転送するという処理を自宅のマシンで行って回避した。

 という訳で,色々と問題点を書き連ねてきたのだが,実はまだこれでは終わらないのだ。次回,もう少し問題点の列挙と,具体的な対策を示してみたい。


その後の状況:ここで書いた不具合は殆ど解消している。DHCP問題は、ブロードバンドルータをかます事で解決。不意のサービス停止は殆どなくなったし、メールに関しても任意のプロバイダに転送できるようになったので、全然OKである。


第8回:「1ユーザーの目で見る,CATVインターネット接続 (後編)」 1999/01/09

 すでに松の内は終わってしまったが、昔は「松の内」=1月15日までだったことでもあるので,あけましておめでとうございますと申し上げてもそれほど問題ではないだろう。本年も本連載をよろしくお願いいたします。

 さて,引き続き東急ケーブルテレビの話である。ちょうどこの原稿を書いている最中,不意にインターネット接続不能になったばかり。最終的にはケーブルモデムの交換に至ったわけだが,どうもそう珍しいことではなさそうである。まぁ買い取りではなくリースなのでそれほど困るわけではないが,障害発生から解決まで24時間以上かかっているあたりがやや問題ではある。

●その1: オンラインのサポート情報が少ない

 「現在の」東急ケーブルテレビの場合,一番問題になるのはこの点だ。要するに人手が足りないのではないかと推定されるのだが,とにかく,細かいことを聞こうとするとえらく手間がかかる。具体例を挙げてみよう。

 東急ケーブルテレビのホームページは http://www.catv.ne.jp/ で,もっぱら契約に至るまでに必要な情報や連絡先「のみ」が記載されている。通常のインターネットプロバイダーであれば,テクニカルサポートのページがここからリンクされており,接続に必要な設定情報やFAQ,過去の障害発生のログといった事柄が記載されていてしかるべきなのだが,残念ながらこのホームページにはそうしたページへのリンクは用意されていない。

 ところが http://home.catv.ne.jp/ というウェブサーバもある。どうもこのルートがこうしたサポートページになる「予定だった」らしい (というのは,ユーザーのホームページが http://home.catv.ne.jp/~ほにゃらら という形で置かれるからだ) 。実際,10月くらいまではこのURLにアクセスすると「現在準備中」の文字が躍っていた。それが現在はというと,

「Server Error このサーバはリクエストの処理中にエラーに遭遇しました。誤った設定がなされている可能性があります。サーバのエラーログを参照するよう管理者に連絡してください」

 一瞬ブラウザの相性かなとか思ったが,Netscape CommunicatorとIE 4のどちらでも結果は同じだから,やはりサーバ側の問題なのだろう。自分ウェブサーバのトップページをこういう状態で放置するプロバイダというのもね……。

●その2: 乏しい設定マニュアル

 契約後,「パソコンの接続方法」なる3ページの紙が送られてきたが,実は,これが設定マニュアルのすべてである。中身はWindows 95とMacintoshの漢字Talk 7.5.5+OpenTransport (!) の場合の2ケースだけ。今時これはないだろう,というほどに簡潔なものである。

 実際この連載を見て「実は私も加入したのですが,Linuxの設定方法が分かりません」なんてメールを読者からもらったほど,マニュアルが役に立たない。前述のように,プロバイダーとしてのサポートページは存在しないから,iMacを使っている読者とかOS/2や各種UNIXを使ってる読者は,そもそも接続方法が分からないことになる (まぁOS/2やUNIXを使う初心者はいないだろう,という割り切り方をしているのだろうとは想像できるが) 。契約の際にも,Windows 95/MacOS以外のOSはサポートしないなどという文言はどこにも存在していない以上,これはやや不親切と言っていい。

 ついでに書いておくと,この「パソコンの接続方法」なる紙に「ケーブルインターネット専用サポートセンタ」の電話番号が記載されているが,いくらかけてもつながらない。業を煮やして東急ケーブルテレビの通信事業部に電話したところ,「あ,昨日閉めさせていただきました」なる返事が……。閉鎖予定のサポートセンタの番号を載せても仕方がないと思うのだが。ちなみに昨年11月に新テクニカルサポートセンタがオープンしたが,それまでの2カ月はえらく不便だった。

●その3: サポート側の人員不足?

 たとえば先日の障害の場合。いきなり一切通信できなくなったため,サポートセンタに電話を掛けると「お客様の地域では別に異常は発生していません」と返事が来る。地域に異常がなくても家では異常なので,こんな返事をもらっても困る。突っ込んで問い合わせたのち,ケーブルモデムのMACアドレスを聞かれて答えたところ,どうもサーバ側からリモートで診断を行ったらしい。ただ,その回答が来るまでが実に3時間。少なくともサポートセンタには,パッとその場で確認できるような手段はないらしい。

 似たような話はいくつもあり,たとえば前回や前々回に書いた,IPアドレスの割り振り数やフィルタの話,あるいはDHCPのやり方に関する仕様は,電話をかけた相手 (当時は新サポートセンタがないので,東急ケーブルテレビの通信事業部に電話した)ではまったくわからなかった。「詳しいことがわかる人間が出払っておりますので,後程連絡させます」とのこと。どうも回線事故の復旧に出かけていたらしい現場担当の方と連絡した際に,あれもこれもとまとめて聞き出した結果らしい。こんな状態でちゃんと運営を続けられるのか,正直言ってはなはだ心配である。

●その4: 役に立たない電子メールアドレス

 最初にのけぞったのが,実はコレ。契約に当たって,回線工事の手間の下見などを兼ねて,同社の営業の方が申込書持参で我が家にいらしたのだが,名刺を拝見するとメールアドレスがない。お聞きすると「いや持ってないんです」。電子メールアドレスを持たないインターネットプロバイダーの営業さんというのは,ちょっと想像を絶するものがある。

 同じことは同社のサポートメールアドレスにも言える。一応mailto:info@catv.ne.jp というメールアドレスが示されているが,ただし書きがあって「電子メールによるお問い合わせをたくさんいただいておりまして,ご返事に時間がかかっております。お急ぎの方は,お電話にてお問い合わせくださいますようお願いいたします」となっている。これ,普通は逆じゃないんだろうか?

 少なくとも東急ケーブルテレビに何か用事がある場合,電子メールは全く役に立たなそうである。これは社内がイントラネット化すらされてない証拠のようにも思える。イントラネットすら使えない環境でインターネットのサポートをさせられても,それは無理だろうと頷けるものはあるのだが……これでいいのだろうか?

 という訳で,前回,今回と問題点を書き連ねてきた。なんだかんだいっても,実際CATVインターネットは便利だ。その高速性,常時接続環境は非常に魅力的である。しかし,だ。肝心のサポート体制がこうした状況では,どうも利用に当たっての不安をぬぐうことができない。いくら「これからはCATVインターネットですよ」と喧伝しても,それを支えるサポートがしっかりしていなくては,ユーザーの裾野が広がらないのではないか。もっと言うなら,こうした状況が続いてCATVインターネットに対するイメージが悪化してしまうとしたら,これ以上の損失はないだろう。まだ始まったばかりのサービスだという点を差し引いても,やはり改善をお願いしたい。

 さて今回も問題点を連ねすぎて,対策まで手が回らなかった。ごめんなさい。次回「対策編」で,その辺の処方というか自衛策を紹介したい。

その後の状況:ここで書いた不具合もほぼ解決している模様。


第9回:「1ユーザーの目で見る,CATVインターネット接続 (トラブル対処編)」 1999/01/16

 前回の記事が流れてから数日の間に,数人の方からメールを頂いた。「やはり私も困っています」から「こんな便利なモノあります」まで,内容はさまざまだったのだが,お陰で筆者以外にも困っているユーザーが多くいることを再確認できた。

 そういうワケで,今回は「対処編」として,どのように東急ケーブルテレビとうまく付き合っていくかについてまとめてみたい。

●プロバイダーなど,代替回線の用意

 残念ながら現時点では,まずは絶対にこれが必要である。どの程度の代替が必要かは,各々の利用度に依存する。

 筆者の場合,やはりISDNの速度とネゴシエーションの早さをどうしても必要とする(常時つなぎっぱなしならばともかく,煩雑にダイアルアップがかかるようなケースでは,電話を掛けはじめてからユーザー認証が終わるまでの時間の長さに耐えられない。ISDNだとこれが10秒内外だ) 。したがって常に,ダイアルアップISDNルータをバックアップ用に用意している。LANで複数マシンを同時に利用する関係上,どうしてもこのクラスが必要だが,人によっては通常のV.34モデムでOKかもしれない。とりあえず別のプロバイダに「保険」として契約しておく方が賢明だろう。

 ちなみに,同じ東急グループには246-netというプロバイダがあり,こちらはIICの下流サイトになっているので,保険としては手頃かもしれない (双方が同じ器材や回線を使っていると,冗長性がなくなるためあまり保険の意味をなさない) 。ただし現在,レギュラーサービスの会員申し込みを中止しているとのことなので,別のプロバイダーを探した方がいいだろう。

●LANの二重化

 やや面倒だが,ある程度台数の多い環境では,東急CATVからのLANと家の中のLANを切り離し,間にルータを入れたほうが無難なケースが多いだろう。筆者のところなどは,そのいい例だ。一応「自宅」ではあるし「個人」での利用だが,現時点ではWindows系のマシンだけでも5台がつながっており,これをルータ経由で外に接続している。

 さてこの理由は,東急CATVが落ちるたびにDHCPが動かなくなる事態を防ぐ,という1点にある。また,ルータにモデムを接続しておき,RIPを使った動的ルーティングを設定すれば,東急CATVが落ちても自動的にモデム経由でのアクセスに切り替わるので便利だ。

 もっとも,これは言うのは簡単だが設定がやや厄介ではある。実は今筆者のところでもUNIX (Linux Slackware) マシンを1台用意しているのだが,うまく設定ができずまだルータとして利用できる状態ではないため,今のところ「単につながっている」状態に留まっている。これに関しては,ご紹介できるまでにはまだ時間がかかりそうである。

●インターネット上の関連情報の入手

 これは前述の代替回線に関係した話だが,有志による東急ケーブルテレビのためのホームページ,「東急ケーブルテレビ非公認ユーザーズフォーラム」というものがある。東急ケーブルテレビのサポートセンターに電話するより,ここの掲示板を見た方が状況を掴みやすい(!) というすごい状況になっている。また,「CATVインターネット接続メーリングリスト」なるものも存在し,これは上述のページから「CATV関係リンク集」をたどるとアクセスできる。

 前回のコラムで書いた通り,東急ケーブルテレビのテクニカルサポートには,現時点ではあまり期待できない。だがこれらの情報源を活用することで,これまでは単独で対処しなければならなかった問題も随分楽になる。ここの掲示板には,先にも書いた通り障害情報が準リアルタイムでアップされるほか,さまざまな質疑応答がなされているため,かなり有益だ。ここまでの筆者の文章に「一面的な書き方だ」と思われる読者の方も,ぜひここにアクセスしてみていただきたい。アドレスからして「申し込む前に分かるCATV」というだけのことはあり,導入ガイドとしても十分役に立つ。

●合格点すれすれだが,今後に期待のCATVインターネット

 4回にわたって東急ケーブルテレビのインターネットサービスについて述べてきた。色々と短所を挙げたとは言え,今のところ筆者には解約するつもりはまったくない。不満点は多いにせよ,「一応合格」と見なしているからだ。強いて言えば合格点すれすれ,といったところか。

 とにかく,NTTに法外な電話料金を払うことなく,かつ時間帯を選べば非常に高速にインターネットにアクセスできる手段としては,現在のところ一番有力な候補である。ユーザー間で情報の蓄積も次第に行われつつある。見かけよりも敷居は高いが,乗り越える価値はあるだろうと筆者は見なしている。

その後の状況:ユーザーフォーラムはその後、様々な経緯を経て「CATV研究所・臨時サイト」に移転している。移転前の「CATV研究所」は、実は私も出資者の一人だったりするのだが(笑)そういえばMarioさんは今、どうしているのだろう?


第10回:「ハードディスクがあふれてきたら」 1999/01/30

 ここ数年常にそうであるが,ハードディスク価格の暴落ぶりが著しい。数カ月前に秋葉原で富士通の10GバイトHDDを買った時には,2本で5万円という信じられない安さだったが,今や2本で4万円近くまで値段が落ちている。この調子だと今年の年末には,10Gバイトクラスの製品でも,1本で15,000円台まで落ちるのではないか。

 さすがに価格がこれだけ暴落の一途をたどっていると,ディスク圧縮だのファイル整理だのをする手間をかけるよりは,HDDを増設したほうが楽である。ここ数年,

HDDがあふれそうになる
→いちおう,tempディレクトリの下をきれいにしてみる
→新しいHDDに交換する or HDDを増設する

という手順を繰り返している。実際,このやり方は楽だ。筆者の場合,あふれる原因の大半がゲームだったりするので,もうクリアしてしまったゲームはアンインストールして終わりだが,「またいつか遊びたいな」と思ったものについては,増設したディスクに移せば問題が解決する。

 しかしながら「インストールの場所が変えられない」という声が聞こえてきそうだ。確かに,Windowsの場合,インストール場所を途中で勝手に変えられないという問題が常に付きまとう。

 筆者の場合これをどう回避しているか,というと「全てリモートディスクに置く」という技を使っている。うちでは,基本的にローカルドライブはすべて「C:」「D:」「E:」の3つのドライブに押さえるようにしている (なぜか,と言われても困るのだが,いつのまにか「F:」をリモートドライブにする習慣ができあがってしまったのであって,深い意味はない) 。で,アプリケーションはすべてこのF:に置くという規則を保っている。

 こうすると何がいいかといえば,HDDを交換した場合,単にリモートドライブの接続先を変えるだけで,元どおりに使えるのだ。筆者宅ではNT Serverを立ち上げてこれを使っているが,別にNT WorkstationでもWindows 95/98でも,なんならFreeUNIX+Sambaの組み合わせでもいい。とにかくリモートマシンを作って,ファイルはそこに入れておく。この場合,アプリケーションをインストールしても,レジストリや各種iniファイルには単に「F:」の下にファイルが置かれていると記載されているだけであり,それがどこのサーバのどのサービスにつながっているかまでは知らないことだ。この結果,サーバにHDDを増設し,データの移動を行った後でおもむろにネットワークドライブのつなぎ先を変えるだけで移動完了である。

 ローカルドライブだと,こうはいかない。たとえばこれまで「C:」にインストールしているアプリケーションを別のドライブに移動したい (しかもアンインストール/再インストルなしで) という場合,まずドライブの設定をやり直し (SCSI HDDだとSCSI IDを変更しなければならないし,IDEの場合にはドライブのマスター/スレーブを入れ替えなければならない) てから,おもむろにFDDなどでブートし,C:の内容をごっそり入れ替えることになる (ちなみにこの際,DriveCopyとかDriveImageといったユーティリティが役に立つ。筆者はフリーソフトのdtofを愛用している) 。なにしろ,Boot Driveを入れ替えるわけだから手間がかかる。そういう意味では,「C:\Program Files」の下に無条件でインストールするのも考え物である。Tweak UIなどを使って,デフォルトインストール先を変更するのも一案だろう。

 ちなみにWindows NTでは,ローカルドライブのネットワーク接続という荒業が使える。たとえば「C:」に適当な共有名を付けて公開し (当然フルアクセスに設定する必要がある) ,これを自分自身で「F:」にマップするという方法だ。こうすると,当初はC:にどんどんインストールしておき,あふれてきたらHDDを増設してそちらにコピーし,F:のマップ先を増設したHDDにするという方法だ。

 残念ながらWindows 95/98では,自分自身で公開している共有サービスをマップできないためこれが使えないが,そのかわりMS-DOSコマンドのSUBSTが使える。AUTOEXEC.BATの中に,「SUBST F: "C:\Program Files"」なんて書いておけば,後でHDDを増設して移す時には記述を変更するだけで対処できるため,比較的楽なはずだ。いずれにせよ,なるべくアプリケーションのインストール先をC:以外にすることが重要である。

 この方法には副次的なメリットがある。それはアプリケーションのマシン間での共有だ。たとえば筆者は「SoH Launcher」というフリーウェアをアプリケーションローンチャとして使っているが,このローンチャの設定は,レジストリの

HKEY_CURRENT_USER\Software\SoH

の下に格納される。そこで,まず1台のマシンでSoHローンチャのインストールと設定をすべて行い (当然F:の下にインストールする) ,ついでに設定後のレジストリ情報をファイル (.regファイル) に書き出しておく。こうすると,他のマシンでもすぐに同じ設定でSoH Launcherが利用できる (スタートアップにこのSoH Launcherを登録し,「.regファイル」をダブルクリックすれば終わり) 。

 これは他のアプリケーションでも使える手である。ただし,Microsoft Officeのように,C:\Windowsの下に独自のDLLなどをインストールするものには使えない。また念のために書いておくと,仮にできたとしても,ライセンス形態の関係上許されないものも多いので注意されたい。

その後の状況:このネタ、その後DOS/V Magazineでもう一度繰り返して書いたのだが、結構好評だった。ちなみに未だに我が家はこの環境である。


第11回:「とっかえひっかえクロックアップ。CPUに囲まれる日々」 1999/02/06

 HDDや一時期のメモリほどは急激ではないものの,ちょっと前に比べるとずいぶん激しく値下がりするようになったのがCPU。ちょっと前までは新製品が出るたびに,旧品種が一層値下がりするというパターンだったのに,最近はIntel/AMD/Cyrixのシェア争いが激化した結果,信じられないほどの値下がりを招いています。

 まぁこういう競争は健全なものでして,その結果,我が家の大量のマシンにも,新しいCPUがどんどん付くようになってきました。といっても,新しいCPUを買ってしまって,「まぁせっかく買ったのだし,使うか (笑) 」という,目的と手段がやや逆転傾向にある状態です。

 ちなみに,先月1カ月で購入したCPUの数は実に5つ。内訳を述べると,AMD K6-2300MHzが2つ (バルク品とリテール品,各1) ,Celeron 300A MHz (クロックアップに強いとされる,コスタリカ産のSL2WMのバルク) が1つ,およびPentium II 233MHz純正品が2つ (!) といった具合。これ以外に,某編集部とバーター取り引き (笑) でPentium Pro 200MHz/256Kバイトをマザーボード (Iwill P6NS) 込みで手に入れるなど,「ちょっと前 (もしくはかなり前) のCPUが底値に近くなった瞬間に,大量買い」するパターン。この文章を読んでいる多くの人も,大体そんなもんじゃないかと思います。実のところ,レビューなどでさんざんPentium II 450MHzなどを扱っている割には,ついこの前まで原稿書きマシンにIDTのWinChip C6 225MHzが入っていたりするのですから,いい加減なものです。

 ちなみに,これだけSlot1用CPUを買い込んだのだから,家じゅうのマシンがSlot1対応になったかというと,さにあらず。今,我が家にはSlot1マシンは2台 (うち1台はレビューなどで使うテスト専用マシン。もう1台は奥様のマシン) しかなかったりします。私の使うマシンの大半はSocket7 (Super7ですらない!) という状況だったりします。

 ちょっと現在の状況を整理しておくと,

・ファイルサーバ: IDT WinChip C6/225MHz + ASUSTeK P/I-P55T2P4
・原稿書きマシン: K6-2/300MHz + GIGABYTE GA-586SG
・ゲーム用マシン: K6-2/350MHz + ASUSTeK P5A
・テスト用マシン: Slot1 CPU (*1) + AOpen AX6BC
・ゲートウェイ : Cyrix 6x86/166GP+ + ASUSTeK P/I-P55T2P4
・奥様用マシン : Intel Celeron/300A + SOYO SY-6BB
・奥様事務所  : K6-2/200MHz + EPoX EP-51MVP3E-M

が,現在稼動しているマシン一覧となります。ちなみに奥様事務所ってのは,仕事先にマシンを持ち込んでいるという話で,我が家にある訳ではありません。で,スペアというか余っているCPUが,

・AMD K5-133MHz×1
・Cyrix 6x86-200GP+×1
・AMD K6-200×1
・AMD K6-233×1
・Intel Pentium II 233MHz×1

といった具合。なんか数が合わないぞ,というツッコミがありそうですが,テスト用マシンではなるべくさまざまなCPUを使う必要があるので,こうなってます。ですので,上のマシン一覧の (*1) というのは,実は

・Intel Celeron 266MHz
・Intel Celeron 300A MHz
・Intel Pentium II 233MHz

のどれかを適当に使うといった具合。

 たとえばビデオカードのレビューなどを頼まれた場合,時としてCPU性能と描画性能の関係なんかを調べる必要があります。そうした折にCPUをとっかえひっかえしてテストするというわけです。後述しますが,Pentium II 233MHzは,最高350MHzまでちゃんと動作します。で,Celeron 266MHzは,ベース100MHzで400MHz動作,Celeron 300Aを使うと450MHzまで動作可能なので,一応は233MHz〜450MHzまで,ひととおりのテストができることになります。

 最近ではついに,Pentium III 500MHzが秋葉原でフライング販売されるようになり,すでに某ページには560MHz (FSB 112MHzの5倍速) での動作テスト結果が掲載されていたりしますが,さすがにまだちょっと高すぎて手が出ません。まぁ,読者の大半がすぐにPentium IIIに手をだすとも思えないので,しばらくは現行のCPU構成でも,レビューには事欠かないでしょう。

 話を戻すと,筆者の場合CPUとかマザーボードがあるとどうしても,もったいなくてマシンを組んでしまう (笑) 。今も,ファイルサーバの交換用に編集部からせしめてきたPentium Proで1台マシンを組んでいる最中で,組みあがったら,ファイルサーバのWinChip C6+P/I-P55T2P4の組み合わせがリタイアする予定です。

 もっとも,リタイヤと言っても,ちゃんと使えるマシンですから,今度はまたこれでLinuxマシンか何かを組んでしまうかもしれませんが。まぁ,機会があれば次第にSuper7なりSlot1なりに移行しようとは思っているので,今後も不要な部品が続々と出てくることは間違いないでしょう。

 それから,どうしてPentium II 233MHz純正品を2つも買ってきたかという話ですが,まぁ,店員に負けたというか,衝動買いに近いものがあります。そもそもはCeleron 300Aが品薄になってきたことだし,ぼちぼちストックを増やそうかと思って秋葉原を散策していたのがきっかけ。ついでにKlamathコア (初代Pentium IIで使われていた,0.35μのプロセスルールを使ったCPUコア) のPentium IIもあれば買おうかな,などと狙っていたのです。

 このKlamathコアは,ベースクロックとクロック倍率のどちらにもプロテクトがかかっていないため,たとえば100MHz×2.0倍などという動作もできてしまうというメリットがあります。もちろん,普通の人にはこんなことはメリットとならないでしょうが,上にも書いた通り,妙な動作をさせる必要がしばしば発生するので,KlamathコアのCPUが1個あるとかなり便利なのです。ところが折しも,Intelの新しいCeleronでは全然オーバークロックが効かないというニュースが流れたばかり。その結果,ほとんどのショップでCeleronはおろか,300/333MHzのPentium IIまで売り切れ状態。みんな考えることは同じという証拠ですね。

 で,結局末広町そばのあるショップに入ったところ,そこにもCeleronはないものの,Pentium IIの233MHzの最も初期のロットがあるという話。最初は1個25,000円などと言われてメゲたのですが,話をしているうちに,お店側ではデュアルプロセッサ用にこれを2個取ってあり,しかも1個は動作確認とデモのためにパッケージを開封しているとのことが判明しました。しばらく値段交渉をして,「2個まとめて買うなら1個につき19,000円でOK」と言われ,その場で即購入。SL2QAという,最大倍率3.5倍までのKlamathコアのPentium IIを購入してきたという次第です。

 ちなみに動作させてみると,103MHz×3.5倍の360MHzまでは安定動作しました。さすがに発熱がすごいので,別の店でCPUファンが2個付いたCPUクーラーを取り付けてありますが,ケース内部の冷却がスムーズならば,純正ファンでも安定動作するかもしれません。

 なおその後,再び秋葉原でCeleron 300Aが入手できるようになったので,一応こちらももう1つゲット。結果として現在,部屋の中にSlot1 CPUが4つほど余っております。

その後の状況:これを書いた直後、「学生で貧乏です。CPU下さい」とかいうメールが何通も来て閉口した覚えあり。ちなみに今もCPUは余っている。Duronの850MHz×2だのThunderbird 1.3GHzだのといった、中途半端なものばかりだが。(下さいメールは受け付けませんので念のため)


第12回:「手軽に購入できるビデオカード,その見極めポイント」 1999/02/13

 最近,また1枚,MatroxのG100を購入しました。「何で?」と思う人も多いでしょうが,いろいろな要件を満たし,かつ一番コストパフォーマンスが高かったのがG100だからです。今回はそのあたりの話をしようかと思います。

●気持ちいいくらいの値下げっぷり

 前回のCPUと同様,最近はビデオカードの値下がりにも著しいものがあります。一部のブランド (CANOPUS,Diamond Multimediaなど) を除くと,ほとんどのカードが暴落といっていい程の,値段の下がりっぷりです。

 特にRIVA TNTや3Dfx Voodoo Bansheeを搭載したカードが1万円を切っているのにはちょっと驚き。最近はVoodoo2搭載カードでも,12Mバイトを積んだものが12,000円台で普通に入手できる (メジャーメーカー製品はもうすこし高価ですが) 状態で,割合手軽に購入できます。

 大体において,自作や改造の際に,一番効果が分かりやすいのがCPUとVideoなわけです。しかも,ちょっとまとまった金額があれば手頃にビデオカードの交換が可能です。そういう理由で (そればかりでもないのですが) ,今筆者の手元に余っているビデオカードの数は6枚。これでも結構ちょこちょこ,他人にあげたり交換したりで減っているのですが。

 ちなみに,余っているカードの大半は,VRAMが4Mバイトのもの。以前はVRAM容量が2Mバイトのカードがたくさん余っていたのですが,NT ServerやLinuxなど,画面サイズが余り重要でないマシンに流用したり,バーター交換に使ったりといった用途に積極的に使っていたら,在庫がほとんどなくなりました。なお,ちなみに我が家のFirewall用Linuxマシンには,Cirrus LogicのGD-5434/2Mバイトという,5年近く前のカードがいまだに入っていたりします) 。

 メインマシンはいずれもVRAMが8〜16Mバイトのものを使用しています。したがって,4Mバイトの製品は全部スペアとして取ってあるという訳です。なんで8Mバイトかというと,理由が2つあり,

・NT Workstation: 1,600×1,200×16bitの画面表示だと,実データサイズが3.6Mバイト程度になる。このため,VRAM 4Mバイトだとオフスクリーンバッファ領域が十分に取れず,描画が遅い。

・Windows 98: 最近の3Dゲームの場合,最低でも800×600×16bitの解像度は欲しいところだが,スムーズに動かすためにはトリプルバッファが必要になり,フレームバッファで3Mバイト近く占有する。これにテクスチャバッファを加えると,4Mバイトではとうてい足りない。

 という,割に現実的な理由だったりします。

 そうそう,ちょっと前の4Mバイト搭載ビデオカードでは,RAMDAC内蔵で,220MHz程度のドットレートをサポートするというのが流行しました。筆者もMatrox Mistique/220 (4Mバイト) とDiamond Stealth3D/3000 (Virge VX/4Mバイト) の2枚を所有しています。ところがどちらもフィルタのせいか,それともドットレートぎりぎりで使っているせいか分かりませんが,画像のにじみがひどい。そもそも,飯山のMT-8617Eなんぞで1,600×1,200 (72Hz) を出そうというのが無茶なのかもしれませんが。それでも,この環境にいったん慣れてしまうと,なかなかこれ以下の解像度にする気にはなれません。最近のビデオカードはドットレートが250MHz程度まで上がったせいか,ずいぶん表示がきれいになりまして,このあたりも昔に帰るのが難しい理由ですね。

●2D表示がおかしい? 最新カードの落とし穴

 こういった理由があるのと,仕事柄新しい製品を使っていないと話ができない (と言い訳をして秋葉原で色々買い込む) ため,最近発売されたカードを適当に選んで使うことが多いのですが,これに意外な落とし穴がありました。昔,DiamondのViper330を使っていた時も,ドライバのバージョンが上がるまで2D表示がおかしい (特に秀丸での画面の壊れっぷりは気持ちがよいほど) という問題を抱えていました。そして,今メインで使っているVoodoo Bansheeと,テストのために一時期使っていたRiva TNT,およびバーター交換に出したi740,どのカードも揃いに揃って2D表示が相変わらずおかしいのです。

 どう変かというと,画面がちゃんと表示されない。あるいはやたらとすぐクラッシュする,などの問題がしばしば出ることです。

 例えば,汎用2次元CADで有名な「DRCAD for Windows」というソフトがありますが (発売元: 構造システム, http://www.kozo.co.jp/index.html ) ,それまでSocket7マザー+Matrox Mistique (初代のPCI版) で問題なく動いていたのに,マザーボードをSuper7に変えたついでにビデオカードも変えてみたところ,なぜかツールバーのアイコンが一切表示されない。ただの黒ベタのアイコンが並んでいるだけというシュールな画面になってしまいました。

 似たような話は他にもあり,例えば筆者はSoH Launcherというフリーウェア (最新版のSoH3はシェアウェアになっているのですが,筆者はその前の2.96というバージョンを愛好しています) のアプリケーションランチャーを使っているのですが,Voodoo BansheeのグラフィックカードではなぜかこのSoH Launcherを立ち上げた時に,アイコンが一切出てこないという謎な状況になります。ある特定の操作をするとアイコンが表示されるあたりは,更に謎。

 もっと始末が悪いのがOSのクラッシュです。半年ほど前,USからDiehl GraphsoftのMiniCAD 7 for Windowsという建築用CAD (英語版。日本語版はエーアンドエーから購入できますが,英語版を輸入した場合の倍の値段がついてます。http://www.AandA.co.jp/参照) を購入したのですが,それを英語Windows環境で使っていてもクラッシュの山。5分に1回アプリケーションが落ちるという状況は我慢ができません。

 で,冒頭の話にもどると,こういうトラブルがほとんどないのがMatroxの製品だったりします。確かに最新のG200をもってしても,3Dゲームはそれほど高速とは言えないのですが,とにかくきちんと2Dの表示ができるという当たり前の作業ができている製品は,いまのところMatroxのMillenium以降の製品以外,見当たりません。もちろん,CANOPUS,Diamond Multimediaのように,最初は難があっても,待っていれば次第にドライバがバージョンアップされ,安定してくるメーカーも多いのですが,それまでの間待たなければならないというデメリットがあり,あまり嬉しいことではありません。

 Matroxの製品にはもう1つ嬉しい機能があって,Windows NT上でのビデオカードの2枚刺しを,ドライバでサポートしているのです。常々,Windows NTでデュアルモニター構成にしたい (もっとも2台目のモニターをどこに置くのか? という問題はあるのですが) と思っている筆者にとっても,この点はありがたいところ。そういう訳で,普段原稿書きやメール送受信などに使うNT WorkstationにG100を,CADなどを動かす奥さんマシンにG200を入れてハッピーになっている今日この頃です。なお,某誌にもちょっとだけ書いたのですが,奥さんマシンの方はゲームもする関係で,G200ではやや3D描画性能が心もとない。そこでDiamond MultimediaのMonster 3D II/12Mバイトを組み合わせてあります。ちょっと贅沢かも。

 最近はビデオカードの3D性能競争がますます激しくなっていますが,こういった基本的な部分をもう少しきちんとして欲しいな,と思ったりします。純粋なゲームマシンならば構いませんが,他の用途にもPCを使うことがある場合,ちょっと心に留めておいたほうがいいでしょう。

その後の状況:相変わらずMatroxは愛用しているのだが、先日G550/AGP/32MBとG450/PCI/32MBの2枚挿しでデュアルディスプレイじゃ!とか試したら、OSのブート中にコケやんの(;_;)求G550/64MBといった感じ。Parheliaは高すぎる。そういえばMiniCADはその後VectorWorksに進化。最初のバージョンは泣きながら買ったが、その頃から奥さんの仕事がなくなってしまい、それ以来投資していない。最近はVersion 10にあがってるのね。


第13回:「残り物には福がある,廃品リサイクル」 1999/02/27

 先週,先々週と「パーツが余っている」という話をしたところ,幾人かの読者の方から,「余っているなら下さい」といったお便りを頂戴しました。が,申し訳ありませんが,「余っている」は「不要である」とイコールではないわけでして,寄付寄贈の類は遠慮させて頂いております。個別にお返事はいたしておりませんが,そういう訳でご了承ください。

 と書くと,「んじゃ何でそんなにパーツ持ってるんだ?」という疑問を抱かれる方も多いでしょうが,もうこれは「予備用」としか答えようがありません。さすがにPCが動かないと仕事にならない関係上,大抵のパーツについてはストックを抱えています。いま,ストックとして持っているものは,

・CPU : Socket7×4,Slot1×4
・マザーボード : 合計2枚
・メモリ : 30pin SIMM×4,72pin SIMM×2,168pin DIMM×1
・ビデオカード : 合計6枚
・SCSIカード : 合計2枚
・サウンドカード : 合計3枚
・CD-ROMドライブ : 合計4台
・イーサネットカード : 合計2枚
・HDD : 1台
・キーボード : 3つ
・マウス : 一山 (笑)
・電源 : PC用×1,汎用電源×1

といった具合。FDDはいまは手持ちがないのですが,これも必要なら他のマシンに付いているものを流用できるので,不意に何かのパーツが壊れた場合でも (ケース以外は) 手当て可能になっています。

 ちなみにマウスの「一山」は訳ありです。以前は各マシンで1つずつキーボードとマウスを使っていたのですが,「キーボード/マウス/モニター連動切替器」という便利なモノを導入した結果,1つのキーボードとマウスで4台のマシンを切り替えて使えるようになりました。そのため,大量のマウスが不要になったという理由が1つ。それに,以前はLogitechのMouseMan (好みがあるので嫌う人も多いのですが,筆者は愛用していた) を使っていたのですが,これを全面的にMouseMan+に切り替えてしまったという事情があります。我が家では「ぐりぐりマウス」と呼んでいる,要するにスクロール付きマウスですが,これがいったん使い慣れると,もうスクロール機能の付いていないマウスは使えなくなります。それでスクロール機能なしマウスが大量に余っているというわけです。

 もっとも,筆者の場合使い方が荒いせいか,マウスの寿命はせいぜい1年かもって2年といったところ。これを超えると,ボタンのバネがへたって操作感が悪くなりますし,ボール支持部の軸が磨耗するのか,いくら掃除をしてもまともに動かなくなります。一山のマウスはいずれも,その動かなくなる手前といった趣の状態なので,まぁ非常用としてキープしてあるわけです。

 話を戻すと,こんな一山のパーツを何に使うかということです。一時的には,どこかのマシンにパーツトラブルが発生した場合,とりあえず代替用としての利用を考えています。そんなに簡単に壊れるのか? と疑問を持つかたもいるでしょうが,はっきり言いましょう。意外に壊れます。しかも過去の例からいうと,「交換パーツがない部品に限って壊れる (笑) 」という,まるっきりマーフィーの法則を地で行くような壊れ方をします。要するに,我が家の交換パーツは「マシンが壊れないためのおまじない」みたいなもの,ということもできましょう。

 それに,時折筆者がいままで組み立て,周囲の人間に渡したマシンにトラブルが出て,修理のために戻ってくるケースがあります。通常はOSが回復不可能なまでに破壊されていて (理由は色々ある) 再インストールが必要になったりするわけです。こうした修理のたびに,適当にマシンのグレードアップを行うこともあります。

 こうした修理はだいたい1〜2年に1回ほどあり,その間にこちらで蓄積している予備部品もずいぶんグレードアップしているため,それなりに効果があるという具合。先日も,Pentium 100MHz+Intel Premire II+ノーブランドTrio 64V+/2Mバイトという,なかなか味のあるマシンが戻ってきました。さっそく修理ついでに,Cyrix 6x86-200GP++ASUS P/I-P55T2P4 Rev.2.1+Stealth3D/3000という,これもまた味があるというか,やや偏った構成にしてお返ししたところです。

 こうした3〜4世代古いマシンでも,それまでに比べればずいぶんとパワーアップ。われながらコストパフォーマンスのよいチューンアップです (これで費用を請求できれば言うことはないのですが……さすがに友人知人相手だと,商売にはなりません) 。まぁ冒頭で述べた方々も,こういうことも考えてメールを送られたとは思うのですが,筆者の周りのリクエストに応えるだけで手一杯という状況ですので,悪しからず。

 ちなみに,入れ替わりに残ったノーブランドTrio64V+はすでに別の知人に強奪され(笑) ,Pentium 100MHz+Premire IIは,我が家のゲートウェイマシンとしてのセットアップが着々と進行中です。X Serverや日本語環境などを入れなければ,Pentium 100MHz,メモリ16Mバイト,HDD 340Mバイトなんていう環境でもLinuxが十分さくさくと動きます。すでにdhcpcの導入やIPマスカレードの設定は一応完了。もっとも障害時のルーティング変更などはこれからといった状況なので,まだ完全稼動には至っていません。今月来月は確定申告などに忙殺されているので (笑) ,まぁ4月を目処に何とかしようと思っています。


第14回:「ついに市場へ登場したAMD-K6-III,その性能を徹底分析」 1999/03/13

 前評判の高かったSharptooshことAMD-K6-III。発表はあったものの,全く市場に流れていない状況が続いています。そんな中で,幸運にも製品版とおぼしきものを借用する機会に恵まれ (入手する,でないところが悲しいですな) ,丸1日かけて触ってみました。

●対応はシビア? マザーボードとの相性

 海外を中心に多く出回ったES (Engeneering Sample) 品はコア電圧2.3Vとなっており,「やはり2.2Vでは動かなかったか」と思っていたのですが,製品版はさらに高いコア電圧2.4V。意外に対応マザーボードを選びそうです。まぁ,データシートを見ると最小2.3V,最大2.5Vとなってましたので,この範囲の電圧を供給できればいいのでしょうが。ちなみにASUSTeK P5Aに装着し,コア電圧に2.2Vを供給してみたところ,起動しませんでした。

 同じように問題になるのが,通称「ゲタ」を使った場合。古めのマシンにゲタを使って使えるか,と試してみたのですが,最低限XTコアに対応していないと駄目な模様です。実際,ちょっと古めのSocket7マシン (K6 200MHz搭載) にPowerLeapというCPUゲタを使って搭載してみましたが,電源を入れてもBIOS Setup以降に進めませんでした。CPUゲタの利用を考えている読者は,手持ちのマザーボードがXTコアに対応したBIOSを持っているかどうか,確認したほうがいいでしょう。未対応の場合,動作はかなりリスキーになると思われます。

 同様に怖いのが,消費電力。前述のデータシートによれば,400MHz動作で26.8W,450MHzで29.5Wという消費電力になっています。この大半がコア電圧による供給となっており,したがって2.4Vの供給電流は12.4A/13.5A (400/500MHz) という大きなモノ。K6-2 300MHzがそれぞれ19.9W/8.45Aという値ですから,比較的初期のSuper7マザーボードの場合,明らかにレギュレータの供給能力に不足をきたしそうです。実際,メーカーによってはこんな通告を出しているところもあります。

●さて,期待の性能は?

 結論から言うと「速い」です。とっても。

 まだデータをまとめている最中なのであまり突っ込んだ解説はできないのですが,
例えば,定番ベンチマークであるWinBench 99 Version 1.1の実行結果を示すと

K6-2
/400MHz
K6-III
/400MHz
Pentium II
/400MHz
Celeron 300A
/450MHz
Pentium III
/450MHz
Pentium III
/500MHz
CPUmark 99 26.9 43.3 31.9 37.4 34.9 38.5
FPU WinMark 1300 1350 2060 2410 2300 2550
Business Disk 2560 3060 2790 2330 2890 2470
Business Graphics 118 153 158 181 173 192
High-End Disk 7540 9150 6430 6460 7770 6470
High-End Graphics 405 519 447 520 491 542

といった具合になります (*1) 。

 浮動小数点演算系の性能差は埋めがたいものがあり,どうしてもPentium II/III系が有利に見えますが,整数演算系がぐーんと伸びているため,トータル性能としてはほとんど見劣りしません。WinStoneについてはAMDから性能レポートが提示されているので,こちらをごらん頂くとして,Pentium IIIとほぼいい勝負になっていることが分かるでしょう。

 一方,3Dゲーム系については,まだ手元の数字がまとまっていないので感覚的なものになりますが,

・3DNow!対応ゲーム : 同クロックのPentium IIIをあきらかに凌駕
・3DNow!非対応ゲーム : K6-2より多少は早いが,それほど大きな差はない

といった結果になります。やはり浮動小数点演算を多用するゲームの場合,L2キャッシュが高速でも,ボトルネックが計算性能にあるため,それほど性能が上がらないという話なのでしょう。

 ちなみにTriLevel Cacheの性能差ですが,確かにFICのPA-2013 (2Mバイトキャッシュ) を使ってみたところ,512KバイトのP5Aよりもう一回り高速になる印象でした。実際,Winstone98では,400MHzのK6-IIIと500MHzのPentium IIIがほぼ同一の成績を残すなど,威力は大きそうです。

 ただし万能ではないのはL2キャッシュと同じで,いくら2MバイトのL2 (K6-IIIではL3キャッシュになります) を積んだからといって,別に浮動小数点を高速に演算できるわけではありません。したがって,3DNow!非対応3Dゲームなどでは,その威力を実感するのは難しいでしょう。

●クロックアップ性は?

 これは,残念ながらあまり期待できそうにありません。実際P5Aで試したところ,105MHzの4倍速で420MHzまでは安定動作しましたが,そこで打ち止め。110MHzの4倍速,440MHzは立ちあがってさえくれません。そもそも,2.2Vでは400MHzで駆動できないということでコア電圧を2.4Vにしているわけですから,コア電圧アップで活を入れるのにも限界がありそうです。

●そして結論。お買い得度は?

 ということで,個人的主観による「お買い得度」ですが,値段次第ですがそう悪くないといったところでしょう。こと3Dゲームに関する限り,まだまだ3DNow!非対応のものは多いため,こうした製品を速く動かしたい,という場合にはPentium II/III系列の方が有利でしょう。

 逆に,今Super7マザーを抱えているのであれば,K6-IIIはなかなか良いアップグレード手段になりそうです。400MHzのK6-IIIで,使い勝手は450〜500MHzのPentium II/IIIとほぼ同等なのですから,コストパフォーマンスが非常に良さそうです。問題はいつ製品が市場に流れるか,ですが,こればかりは全く予定が立ってないそうで……。

(*1)テスト環境
マザーボード : ASUSTek P2B-F (Slot1) ,P5A (Socket7)
メモリ : 128Mバイト PC/100 SDRAM (CL=2)
HDD : Maxtor DiamondMAX 8.4Gバイト
Video : Matrox Millenium G200 AGP 8MB SGRAM (Driver Version 4.51)
OS : Windows 98+DirectX 6.1


第15回:「物欲はどうにも止まらない? 続々登場する新製品」 1999/03/20

●新製品ラッシュ到来の春,物欲とどまるところを知らず?

 今月は新製品ラッシュ。秋葉原をふらふらと巡回しているとつい買い物の衝動に駆られてしまいます。

 今月,強力に筆者を誘ったのがAMD-K6-IIIとATIのRage 128,廉価なDVDドライブ。いずれも「非常にお買い得」と筆者の脳に電波を飛ばしているため,ついふらふらと……。さすがにK6-IIIは「もうちょっと待てば価格が落ち着くだろう」という計算もあって買い控えましたが,他は全部購入してしまいました。

 K6-IIIは,ビジネス用途にかなり向いたチップと言えそうです。ただし非3DNow!対応ゲームを多く抱えている筆者としては,Slot 1マザーでCeleron 300Aの450MHzオーバークロックの方がやや魅力的に見えることも事実。ABitのAB-BH6を11,000円で購入したこともあるため,今すぐには移行しないかもしれませんが。

 Rage 128は,以前テストをしたときからずっと入手したいと思っていました。1つはいま使っているVoodoo Bansheeカードが「3Dは高速で (まぁまともに) 動くが,2Dの表示に難が多い」点にいい加減嫌気がさしており,交換用に何かないかと物色していたところなので,ちょうどお手ごろ。32MバイトSDRAMを搭載したRage Furyのバルク品を,18,800円で購入しました。バルク品の場合,DVDプレイヤーなどのソフトは付属しませんが,まぁ,こういったものはなくてもそれほど困りません。

●求む! Windows NTで動くソフトウェアDVDデコーダ

 DVD-ROMはPioneerのDVD-103S。第3世代でありながらPhase2 Regionを殺すことができ,リージョンコードの書き換えが可能な便利な製品です。

 某誌でもこの話は書いたのですが,基本的にはDVDタイトルというよりも,DVD-ROMの読み出しを行うのが主目的。ただ,せっかくこれがあるんだから,DVDタイトルも見られる方がうれしい。で,ソフトウェアDVDデコーダ (SOFTWARE CINEMASTER 98) をインストールしたのですが,何とNTでは動作しないことが判明。あちこち探し回ったのですが,現状ではNT 4.0で動くソフトウェアデコーダは存在しないらしい,ということが分かりました (NTをサポートしたデコーダカードもあるのですが,そのためだけに4万円を払う気にもちょっとなれません) 。

 泣く泣く,テスト用のSlot 1マシン (こちらにはWindows 98が入っている) とドライブを交換しました。本当はNTマシンで直接DVD-ROMにアクセスしたくて購入したのですが……。まぁこうした用途の場合は,テストマシンのDVD-ROMをネットワーク経由でマウントするしかいようです。

 そうそう,ネットワークで思い出したのですが,最近のスイッチングハブの値段は,ちょっと驚異的なものがあります。1年ほど前なら,10BASE-T/100BASE-TX自動切換,8ポートのスイッチングハブならだいたい8万円前後という価格でした。ビジネス用のインテリジェンススイッチングハブとなるとさらに高価で,20万円あたりから,というのが相場。

 ところが最近は10BASE-T/100BASE-TX自動切換8ポートハブが25,000円〜3万円という信じられない価格。一説によれば,汎用チップメーカーがスイッチングハブの市場に本格参入した結果,ポート単価がそれまでの5,000円〜8,000円から,いきなり2,500円〜3,000円に下がってしまい,家庭内LANにさえ使えそうな価格になってしまいました。

 もっとも,普通の家庭内では,100BASE-TXのスイッチングハブが必要なシチュエーションというのはあまり考えられません。筆者宅では100BASE-TXのノンスイッチハブを使っていますが,これはデータが全部ファイルサーバにまとめてあるため,10BASE-T (=1Mバイト/秒) でアクセスするとさすがにHDDに比べて遅すぎるからというのが主要な理由。同時に動いてるマシンもせいぜい3〜4台 (多すぎる,などと突っ込まないように。1台のマシンでベンチマークテストを行いつつ,1台のマシンでデータをまとめており,時々気晴らしにもう1台のマシンでゲームをするのに絶対必要なのです。ちなみにファイルサーバは別マシンなので,合計4台という計算) でしかないので,当分スイッチングハブのお世話になる必要はなさそうです。

 ちなみに,今年前半に登場しそうな製品には,Voodoo 3カード (3DWinBench 99をK6-III 400MHz+Voodoo3-3000でテストしたところ,何と3DWinMark値が700突破) とか,RIVA TNT (こちらは3Dテストはまだですが,チューンアップすると既存のTNTの倍近く速くなりそう) ,Matrox G300/G400 (G300はほぼTNTに並ぶ性能!) とやはり目白押し。K6-III 450MHzも登場するでしょうし,これに合わせて2MバイトキャッシュのSuper 7マザーも用意しようかな……と,物欲が収まる兆しはまったくなさそうなのでした。

●東急ケーブルテレビその後: 回線増設はなされたものの

 以前,3回に分けてレポートした東急ケーブルテレビのその後について,簡単に触れておきます。

 その後,契約数が5,000を超えたこともあり,上位接続回線が6Mbpsではさすがに不足が目立ってきました。とくにテレホーダイ時間ともなれば,インターネットへの接続自体がほとんど不可能な状況。この状況を緩和するためか,これまでIIJの横浜につないでいた回線をIIJ東京に切り替えるとともに,12Mbpsに増速されました。

 これで短期的に速度面でのハンディはだいぶ解消された (どうもサブセンターごとに混雑状況が異なるらしく,筆者の使っている学芸大サブセンターは何ともないのに,別のサブセンターでは全滅といったことも時折あるようです) のですが,サポートの面は相変わらずいまひとつ。

 今回12Mbpsに増速した際も,工事後ほぼ24時間はトラブル続きといった具合でした。このあたりについては,前回も紹介した東急ケーブルテレビ非公認ユーザーズフォーラム ( http://mousi.com/mae_ni/wakaru/catv/ ) で詳しく議論されています。ここは最近ではリアルタイム渋滞情報なども追加され,より便利な内容になりつつあります。東急ケーブルテレビへの加入を考えている人や,それ以外のCATVインターネットを考慮中の人には,一見の価値があります。

 ……ですが,裏を返せば,理想的な状況はまだまだ遠いということなのでしょう。

●またの機会に!

 さて。突然ですが,4月からの誌面改定に合わせて,日々是ちゃれんじは今回をもっていったん終了となります。なお似たような話を,ソフトバンク (4月1日からはソフトバンクパブリッシングに社名が変わりますね) の『DOS/Vmagazine』という雑誌で,「変幻自在 II」というタイトルで連載を掲載していますので,こちらもよろしくお願いします。

 ではまたお会いしましょう。



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